2019年1月18日金曜日

Beatlesはどこが凄いのか?

Beatlesはどこが凄いのか?ズバリ答えるのはかなり難しい。凄い事実や記録はいくらでも思いつくが、一つか二つに絞るのは大変だ。
それでも無理に絞ってみよう。色々考えてみた。

一つだけに言うなら「新鮮な風と、エネルギーをもたらした」ということではないかと思う。
時代背景を考えると、Beatles全盛期は第二次世界大戦終戦から20年後。社会の混乱から復興し、上り調子になっている時代だ。古い時代から新しい時代へと変革していくまっただ中にBeatlesは登場した。そして新しいスタイルを次々と確立して、新しい時代・世代を体現して見せた。それで新しい世代だと認識した若者が色々なムーブメント(モッズとかヒッピーとか)を起こしたり、新しい感覚を持って次の時代に向かった。
これはBeatlesの功績というより、そういう時代だったからこそ出たもので、それに最高にうまく乗ったのがBeatlesだったということなのだと思う。Beatlesがいなくても変わりの誰かが時代の波に乗ったに違いないけれど、現実に時代の象徴となれたのはBeatlesだ。

「新鮮な風」を吹かすということは、前例を否定することだ。そして「こういうのもアリなんだ!」と気付かせ、人々に前進する勇気を与えることだ。それをBeatlesがやった。「新しいことをやれよ」なんて一言も言わない。ただ、常識に捕われずに良いと思うことをやっただけだろう。そのスタイル自体が新しかった。

例えば、曲を自作自演する。現代では当たり前で、そもそもアーティストはそういうものと思っているが、当時は違っていた。作曲家の先生に曲を書いてもらい、作詞家、編曲家の先生のお世話になるというのが常識的順序だった。Beatlesの場合もデビュー作「Love Me Do」が自作の曲でそこそこのヒットを出したので、2作目で勝負をかけるべく、プロの作曲家作の曲を用意した。しかし、その曲(「How Do You Do It」)を蹴って(新人のクセに)、2作目も自作の曲をリリース。しかしこれが大ヒット。痛快だ。
以来、自作曲を出すのは当たり前となり、他バンドにも影響を与える。例えばRollong Stonesは作曲が苦手(彼らのデビュー2作目はBeatlesの曲だ!)だったが、それではいかんとミック・ジャガーとキース・リチャーズを缶詰状態にして曲が出来るまでは外に出さないという荒技で作曲させたりした。60年代後期から70年代には「シンガー・ソング・ライター」という言葉が生まれ、それから20年以上も使われる言葉となったが、これはただの「シンガー」ではなく「ソング・ライター」でもあるぞというアピールの表われだ。そこで、一般に「歌手」とか「楽団」「バンド」という呼び方から現代のように「アーティスト」と呼ばれるようになる。

これは自作自演だけでなく、曲の内容も「恋の歌」から、何らかのメッセージ性のある歌など、内容の濃いものに変化したからで、これもやはりBeatlesが最初だ。自分で曲を作るということに加え、内容も変えてしまう。「そんな内容では売れないぞ」とオドシをかけられただろうが、デビューから数年で絶対的な存在になったため、そこからは自由なことが出来たからこそだ。
例えば「Help!」というカッコいいアップ・テンポのロック・ソングでは、曲の雰囲気とは裏腹に「現在の自分たちの環境から抜け出したい。助けてくれ」という、悲痛な、ある意味皮肉な感じの内容になっていて、まったく売れ線狙いとは言えない。「In My Life」は「Strawberry Fields Forever」では幼少期の記憶が歌われているし、「All You Need Is Love」では「男女間の恋」ではなく「人類愛」を歌っている(ここまでいずれもジョンの曲)。「Taxman」や「Piggies」のように政治的な歌もある(この2曲はジョージの曲)、とにかく一般的ウケしそうな恋の歌ばかりではない。(もちろん恋の歌も沢山ある)
メッセージ性があるから、もはや「歌手」というより「アーティスト」ということになった。

演奏スタイルも新しく、それまでは普通、バンド名はリーダーの名前になる。エルビスやチャック・ベリー等はそのまま個人名だし、Bill Haley & The Commetsのように、シンガーとバック・バンドの形をとるのが普通だった。バンド名だけの場合はVenturesのように歌がない、インストゥルメンタル・バンドを指していた。
Beatlesの場合も、当初はジョンをリード・シンガーにして、Johnny & The Moondogsと名乗っていた時代もあったが、一人をフューチャーするのはやめになった。以降、個人名でなくバンド名だけの例はいくらでもあり、当たり前となった。

このようにBeatlesが吹かせた「新鮮な風」は沢山あって、上記以外にもいくらでもある。演奏スタイル、録音技術のような音楽的なことから、映画やファッション、発言に至るまで様々だ。曲のパターンやコード進行など、「すべてBeatlesがやってしまったことの焼き直しにすぎない」という話しさえあるくらいだ。
そして何よりこの「新鮮な風」で得た勇気とエネルギーから、フラワー・ムーブメントやベトナム戦争への反対運動のような様々な動きにつながっていくことになる。まさに「時代の象徴」「時代の申し子」のような存在だ。時代の申し子になれたことが偉大だというべきか。
だから、もし他の時代にジョンとポールがいて出会っても、いや、ジョン以上、ポール以上のミュージシャンがバンドを組んでもBeatlesにはなれないということにもなる。ジョンやポールが優れた偉大なミュージシャンであることは間違いないが、時代の流れにピッタリとハマったことが一番凄いことだし、奇跡的な出来事だといえる。

0 件のコメント:

コメントを投稿