2018年11月20日火曜日

Mr.Big

自ら「大物」と名乗ってしまうこのバンド名が、実は70年代の英国バンド・Freeの楽曲からとられているのは有名な話し。実際、その曲のカヴァーもしている。

1988年にその「大物バンド」の結成のニュースが飛び込んで来た時は興奮した。何しろビリー・シーンとポール・ギルバートがいるというのだ。ちょっと不思議な取り合わせにも思えたが、ビリーは当代きっての凄腕ベーシスト。直前はデイヴ・リー・ロスのバンドでやや大人しめのプレイをしていたが、相手がポール・ギルバートとなると、そうもいかないだろう。何しろポールは、当時最強の早弾きテクニシャンのイングヴェイ・マルムスティーンを超えたのではとも噂される光速ギタリスト。最もホットな若手ギタリストといえるプレイヤーだからだ。
この2人が組むのだから、超テクニカルなプログレシヴィ・ロックでもやるのだろうか?という感じだった。
ちなみに、エリック・マーティンはまったく知らない無名のヴォーカルだし、パット・トーピーも調べれば「ああ、Impellitteriにいたドラマーね」という程度の知識だった。だからこそ、余計にギターとベースのバンドだと認識したものだ。

次のニュースは新曲「Addicted To That Rush」のビデオだった。
イントロからのベースとギターは予想通りのハイレベル・ユニゾン・プレイだったものの、ハスキーなヴォーカルを中心とした楽曲に意外に感じつつも好感を持った覚えがある。ちょうど時代はLAメタル、ヘア・メタルの時代からブルーズ・ロック回帰への流れで、それにもピタッとハマる骨太ロックという感じ。今でも1stアルバムは最高のブルーズ・ロック・アルバムだと思う。ブルーズがベースでありながら、派手なギターフレーズもところどころに散見され、太いベースが屋台を支えるバランスが最高だと思う。

更に2ndでは、前作を踏襲しつつも、ポップな「Green-Tinted Sixties Mind」や「Just Take My Heart」、そして何と言っても全米No.1を獲得した「To Be With You」と、ブルーズだけではなくBeatlesっぽいポップさも打ち出す。
この2ndも1stとは違った意味で最高傑作と言えるのではないかと思う。

3rdは少し落ち着いた感じがするが、個人的に「Promise Her The Moon」はMr.Bigでも最高の曲ではないかと思うほどの美しい曲。この1曲のおかげで1st、2ndに匹敵するアルバムだ。

だが、この初期の3枚で一区切りになってしまう。(個人的に)
96年の「Hey Man」も良い曲はあったが、なぜか初期のようにワクワク感がない。ライブを見たのも96年が最後だ。
この後、ポールが抜けてリッチー・コッツェンが入り、ある意味期待もしたが、ポールのポップさ分かりやすさが消えた分、いまいちになってしまう。(ポールのソロの方が楽しめた)
ポールが復帰した2010年の『What If…』、それ以降のライブ等も含めて、「さすが」と思わせる素晴らしいさはあるが、やはり初期のワクワク感はない。これは自分が年老いたせいかもしれない。

最後に、今年(2018年)、パット・トーピーが亡くなってしまった。パーキンソン病と闘っていたことを公表し、まともにプレー出来なくなってもバンドと共にあったが、ついに力尽きた。パットはバンドの名付け親でもあった。
ライブでのハイライトの一つだったドラム・ソロの「Yesterday」を覚えている。もちろんBeatlesのあの曲だ。ドラムのない落ち着いたあの曲をドラム・ソロにするという発想。内容は激烈な16ビートをメインにしたテクニカル・ドラムの中で、パットがあのメロディを歌うというもの。ドラム・ソロというと、ビート感がなくただ激烈に叩きまくっているものが多いが、パットのソロはちゃんと曲になっていて、ビート感もあり、しかし手数の多い激しさもあるものだった。そしてヴォーカル付き。声の良さもさることながら、ヴォーカルとドラムだけという原曲以上にシンプルな構成と、弦楽四重奏+ギターの曲を激しいドラムで表現するという面白さが相まったものだった。

0 件のコメント:

コメントを投稿