2018年11月9日金曜日

2人のギタリストの役割

Whitesnakeはツイン・ギターのバンドだ。ミッキー・ムーディとバーニー・マースデン、ミッキーとメル・ギャレー、メルとジョン・サイクス、エイドリアン・ヴァンデンバーグとヴィヴィアン・キャンベル、エイドリアンとスティーヴ・ヴァイ、ダグ・アルドリッジとレブ・ビーチ、そしてレブとジョエル・ホークストラ。(他にも若干の違うパターンがあるが、主なものはこんなところ)

ギタリストたちを選んでいるのはもちろんデイヴィッドだ。適当に選んでいるのではなく、ある程度明確なビジョンを持って選ばれている。というより、一番最初のミッキーとバーニーのパターンをそのまま後にも当てはめているだけかもしれないが、同じタイプを2人にはしないように、仮に似たタイプになってしまった場合は出来るだけ違う色を出し合うよう仕向けているようだ。

で、役割を簡単に分けてみると、一番重要なのは作曲パートナーだ。ギタリスト2人のうちのどちらかが作曲パートナーとなり、より重要度が増す存在となる。
ステージ上では、弾きまくる派手系ハードロック・ギタリストと、渋めのブルーズ・ギタリスト。バーニーとミッキーがモロにそれだ。スティーヴ・ヴァイが加入した時にエイドリアンが自分の存在価値に迷った際、デイヴィッドは明確な答えを与えている。「君はセクシーなブルーズ・ギタリストでいてくれ」

ハードロック  ブルーズ  作曲パートナー
 バーニー   ミッキー   バーニー
  メル    ミッキー    メル
 サイクス    メル     メル
 サイクス          サイクス
ヴィヴィアン エイドリアン エイドリアン
 ヴァイ   エイドリアン エイドリアン
  レブ     ダグ     ダグ

役割を簡単に整理してみた。立場が微妙なのはメル・ギャレーで、ミッキー在籍時はハードロック・タイプのギタリストとしての立場であったが、相棒はジョン・サイクスに変わるとブルース・タイプに変化する。特にメルのプレイ・スタイルが変わったわけではないので、あくまで相対的に、相手とのバランスを見て、ということになる。

サイクス一人ギタリスト時代は、ブルーズ担当がいないことになる。この時期は、サイクスの持つ多少のブルーズっぽさと、デイヴィッドのブルーズ色がWhitesnakeのブルーズ担当というが、他の時期と比べてブルーズ色が弱くなったのは仕方のないところだ。
しかし、その時期に最大のヒットである『Serpens Albus』を作ってしまったことでWhitesnakeのバンドとしてのアイデンティティがよく分からないことになってしまう。以降、ブルーズ担当のエイドリアンはヨーロッパ人だし、それほどブルーズの人というわけでもない。ヴィヴィンやヴァイと比較した場合にブルーズ寄りというだけのことだ。ダグはアメリカ人だが、やはりそれほどブルーズの人でもない。器用なのでブルーズもやれるのと、プロになってから勉強して身に着けたブルーズだ。

そして現在のラインナップはレブ・ビーチとジョエル・ホークストラだ。この2人はどちらがハードロックでどちらがブルーズなのだろう。
スライドの得意なミッキーと弾きまくりたいバーニーの場合は違いがハッキリしていたが、サイクス以降は全員ハイテク・ギタリストなので、基本的にどんなスタイルでも出来てしまう。ギタリストの奏法的な視点で見てみると、サイクス、エイドリアンはピッキング重視タイプ、ヴィヴィアン、ヴァイ、レブはハンマリング多用のレガート・タイプといえる。ダグもレガート・タイプだと思うが、レブと比較すればずっとピッキング派だ。(サイクスもハンマリング多用の早弾きは特徴的だが、ピッキングのトリルやゲイリー・ムーア・タイプの早弾きもあり、他と比べればという意味。エイドリアンも同様)
前者がブルーズ・タイプになりやすく、後者が派手系になりやすい。サイクスもヴァイやレブと比べれば明らかにブルーズ・タイプに分類されるだろう。
そこから考えればレブとジョエルの場合、レブはレガート・タイプだが、ジョエルはかなりのテクニシャンで、ハンマリング系もタッピングもレブ以上ではないかと思えるほどのレガート巧者だ。しかしピッキング系もブルーズっぽいものもかなりのものなので、結局彼はオールマイティの何でも屋だ。
ソロを担当する曲を見るとある程度わかるのだが、レブとジョエルの場合はこれも微妙だ。レブをブルーズ・タイプに分類するのは結構無理がある気がするが、以前はダグの担当だった「Crying In The Rain」なんかもブルージーに弾いている。しかし、もちろんジョエルもブルージーなものは出来るので、結局現ラインナップは各曲ごとに適材適所に役割を変えているのではという風に考えるしかないだろう。

と、いうよりもはやWhitesnakeのギタリストの役割は存在しないのかもしれない。ダグとレブまではある程度ライバル関係になって火花を飛び散らせるような雰囲気もあった。が、現在はレブが望んだ位置に着く事が出来、新参者のジョエルは何でも出来るので、何を押し付けられても問題ない、ということでとても平和にやっている、ということではないかと思う。トミー・アルドリッジが「ダグがいた時は今より緊張感があった」という証言を遺している。

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